ボーイズドレッシングBLOG

岩手県盛岡市で活動する劇団『ボーイズドレッシング 』主に主宰のベロ・シモンズが気ままに綴ります。

そして僕は途方に暮れる


そして僕は、途方に暮れる / 大沢誉志幸

 

今東京のシアターコクーン上記のタイトルの芝居が上演されている。

作・演出はポツドール主宰というか、「愛の渦」とか映画監督として最近名前をよく聞く三浦大輔

主演はキスマイの藤ヶ谷くん。

チケット・・落選したのであった。そりゃそうよね。キャストがキャストだもん。

初めて行った下北沢の本多劇場。憧れの本多劇場。演目はポツドールの「激情」という作品だった。

リアルに作り込まれた舞台美術。借金まみれのどうしようも無い青年が北の田舎で織りなす、三浦版北の国からといった作品だった。

 

クズな主人公。裏切りとしょーもなさ、セックス、暴力、閉塞感・・。裸になり、殴られ、ボロボロになっていく登場人物と同様に、観劇中おれのこころも価値観も倫理観も丸ごとぶん殴られている感じがした。

そして、舞台上の最低で弱くて、でもどこが抜けきれない登場人物達。あ、これおれだわって思った。痛かった。

もう10年前に見た芝居だが今でも終演後の空気を覚えている。

最悪の結末を迎え登場人物が誰一人幸せにならないまま暗転幕が降ろされ、乱暴に客電が点く。客達は、深いため息をしたあと、拍手もせず足早に会場を後にした。

 

おれは放心状態のまま、夜行バスが出る池袋駅へと足をなんとか急がせた。

そういえば岡村ちゃん岡村靖幸)が大好きになったのもこの芝居からだった。だって開場中、岡村ちゃんの「セックス」って曲がエンドレスで大音量でかかってるんだもん。

恐らく岡村ちゃんがシャブ中の時に作ったであろうこの曲。
欲望むき出しで都会的なわい雑さと寂しさが歪に同居してて、なんか三浦さんに勝手ながらピッタリと思った。

 

人が地に堕ちてくひんどい話を書いても、三浦さんの根底にはロマンチシズムが流れている。乱交パーティを舞台にした、愛の渦のキスシーンが異様に美しいように。

 

新作のそして僕は途方に暮れる。は逃亡劇だそうだ。

公式サイトからのあらすじを引用する。

 

菅原裕一(藤ヶ谷太輔)はフリーターで自堕落な生活を送っている。とあるきっかけで、恋人・鈴木里美(前田敦子)、親友・今井伸二(中尾明慶)、バイト先の先輩・田村修(米村亮太朗)、学生時代の後輩(三村和敬)、姉・香(江口のりこ)、更には母・智子(筒井真理子)を芋づる式に裏切り、あらゆる人間関係から逃げ続けることになり、後戻りできなくなる。しかし、最後に偶然にも、家族から逃げていった父・浩二(板尾創路)に出合い、裕一の中の何かが変わる。
特段、裕一が人の道から外れた『悪い人間』というわけではない。何かの歯車が狂い、このような事態に陥るが、誰でも一つ、ボタンを掛け違えたら、彼のようになりえるのではないかと思えるくらい、ただただ、そこら辺にいそうな普通の価値観の人間なのである。裕一はなぜ逃げ続けたのか、最後にどのような決断をするのか…

 

多分誰も幸せにならなそうだけど、タイトルにも引用されたこの曲を聴くと、三浦さんは人を信じてるんじゃないかな?と思う。

まー最近流行りのポストドラマ演劇とか、嫌いじゃないし否定はしないけど、やっぱりおれはしっかりドラマが書けるようになりたいな。
人間を知った気じゃなく、傲慢じゃなく描けるようになりたいな。

そんなことは下北沢で初めて芝居を見た夜から、何年も経ってようやく理解したことなんだけどね。